Interview with Shinsuke Mitsuoka, the designer of liberum arbitrium

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期待の新人ブランド「リベルム アルビトリウム」へ本邦初インタビュー!


Brand Roots 1:今期のコレクションのキッカケとデザインプロセスの展開方法。

「単純に『ゴーストって響き格好良いなー。』と思ったところが始まり」

今期のイメージ写真

今期は「ゴースト障害」をテーマにしましたが、どのようなキッカケで生まれたテーマですか?

最近は言葉から得るインスピレーションが多くて、単純に「ゴーストっていう言葉の響きが格好良いな」と思ったところが始まりです。ここに辿り着くのに深い意味もありませんし、本当に“出会い”という感じです。そこから、ゴーストに纏わるキーワードを調べていく内に「ゴースト障害」や「ゴーストホワイト」といった今回のコレクションに関連する重要な言葉達に出会って、イメージが膨らんでいき、このテーマをコレクションの軸に展開することを決めました。

コレクションを展開していくプロセスはどうやっていますか?

キーワードリサーチからデザイン画に落としこみます。それから、イメージに近い生地を使ってトワルを組みますね。

デザインする際に、ミューズのようなイメージしている人間像や精神性はありますか?

イメージ的な設定はなんですかね・・・難しいなー。イノセントな感じ、華奢で中性的な感じの男性・・・見た目の雰囲気はスゴく意識していますけど、着る人のメンタリティーはあまり意識していないですね。きっと、ぼんやりと自分に近い人間像をイメージしているのかもしれません。だけど、そうじゃない人が着た時のギャップも面白かったりします。でも、ユニセックスを意識してデザインはしていません。女性が着てもらう分にはいいですが、ブランドとしての打ち出し方はしたくないですね。

Brand Roots 2:初めてのメンズデザインで本格デビューを飾った理由。

「僕がデザインするレディースの服が日本の市場に受け入れられると思わなかったからです」

今期のルック写真

学生時代やロンコレでの発表もレディースだけでしたが、日本で本格的にデビューするラインはメンズにしましたね。全くデザインしたことがないメンズを立ち上げた理由は何でしょうか?

あ~。たぶん、ずっと海外で発表していたらレディースを続けていたと思います。でも、日本で発表となると「ある程度ビジネスのことを考えないといけない」って思った時に、僕がデザインするレディースの服が日本の市場に受け入れられるとは思わなかったからです。これは価格帯の面でもデザインの面でもそう思いました。例えば、ジャケットを6万円に設定して、僕がデザインをしたとします・・・しかし、今の日本の若い女性には僕のレディースのテイストはエッジィが効き過ぎていて、購入層が非常に狭いと思いました。更に、その世代の女性は「無名の若手ブランドにはなかなか手を出してくれないだろうな」という事も同時に予想出来ました。僕の個人的な感想ですが・・・日本のレディース市場として、やはり求められている物は“カワイイ”だと思います。でも、残念ながら僕はあまり“カワイイ”物作りを得意とはしていません。自分の求める女性像のクリエーションが出来ないなら、レディースをやめた方がいいと思いました。僕のデザインだと、男性の方が購買層が多い。これは間違いないと思ったのでメンズに切り替えたという感じですね。

今までのレディースを見ると、メンズのデザインはガラっと変わった印象を受けました。

すごく大きな違いは、僕が男だからと思います。極端な話、メンズの場合はトワルの段階で袖を通すのが自分なので「着て格好良いか?」で判断しています。でも、レディースでは自分で袖を通さないので、トワルを着てもらったモデルを見て「どう美しく見えるか?」ということを意識しています。なので、レディースとメンズではデザインする時の距離感は違いますね。

カッティングが非常に特徴的というか強い拘りを感じました。ご自分ではパターンは引かないですか?また、今回は工場出しは行いましたか?

切り替え線に関しては、特にインスピレーションソースはないですが・・・邪魔になるようでしたら、ない方が良いと思っています。僕はパターンを引かないので「体のラインを活かして、どう遊べるか?」というパタンナーへの挑戦状ですね。相方には、在学中からパターンを手伝ってもらっていて、彼も彼なりの考えもあったと思いますが・・・強引に「うちのブランドに入らないか?」って誘いました(笑)最初は何度も断られましたが、最終的には根負けして今ではうちのパターンを支えてくれています。今回は工場出しをしないで自分達で縫製も行いました。

一つ気になったのがドレープ分量でした。ハンガーの状態と見比べると、モデルに着させた時にもう少し分量があっても良いのではないか?と思いました。

そうですね、モデルさんが若干大きかったですかね(苦笑)本来ならばモデルさんに合わせてシューティング用の服は作るべきなんですが・・・工賃が上がったり、日本人のバイヤーさんも羽織れなくなってしまうので、自分のサイズに合わせて作りました。うーん、もうちょっとゆとりを見せたかったですね。こういった所も若いブランドの難しさを感じました。

デビューブランドとしては、良質な素材や肌触りを意識して使っていることを感じました。そこは、すごい勇気を使ったと思います。

素材は頑張って探しましたね。ラムレザーにしても、エンペラーラムという非常に傷が少ないものを使用しました。あと、素材探しの中では偶然の出会いもありました。今回のコレクションではキーマテリアルとして西陣織を使っているんですが、この出会いがスゴイ偶然だったんです。僕がノッティンガムに留学していた時に、日本から来たおじいさんが大学の一角を使って京都の生地のインスタレーションをしていたんです。その時に同じ日本人という事もあり、少しだけお話をさせて頂いて「もし、また会う機会があれば協力するよ!」と言ってもらって別れたんですが・・・「もう会うことはないだろうな」とその時は内心思っていました。その後、パリから帰国して今回のコレクションたのために京都で生地探しをしていたら西陣織が気になって、たまたまある生地屋さんで名刺交換した時に、ノッティンガムで出会ったおじいさんと同じ名字の方に出会えたんです。珍しい名字だったので、すぐにピンと来ました。思い切ってノッティンガムでの話をしたら、あの“おじいさん”はその会社の先代社長だったんです。その事で話が盛り上がり、それが縁で今回の西陣織の生地は協力して頂けることになりました。本当に出会いは偶然だし大切にしたいなと思いましたね。

今後も日本独自の素材や染色技法は使っていきたいですか?

面白いものがあれば、率先的に使っていきたいですね。日本は技術がスゴイけど、上手く出せてないものが多いと思います。そういったものが作品と噛みあうのであればやっていきたいですね。

Brand Roots 3:今後の展望

「今はメンズラインとしてブランドイメージを作っていきたい」

写真:あしばたかふみ

今回、コレクションをやってみて何か感じたことはありますか?

出来上がった段階では満足でした。ただ、単純に「格好良いスタイルを提案すれば売れる」と思っていましたが、実際にはそうではなくて・・・「日本の市場が、こんなにモード離れが進行しているんだなー」って、自分の感覚との差にビックリしましたね。カジュアルに向かっていることを強く感じました。あと、営業は自分なりに相当努力はしたつもりでしたけど、まずバイヤーさんに見て頂くこと自体が難しかったですね。無名ブランドは見てもらうことも出来ないんだなって・・・時代や社会の流れもあるのかもしれないですが、日本のバイヤーさんへのアプローチの難しさを感じました。しかし、今回の事で今後の課題もたくさん見えて来たので、次回はその点を是非活かしたいと思います。

学生時代は、自分のクリエーションを100%表現できれば正解でしたけど、ブランドとなると違いますからね。次のコレクションは、そういった部分でもデザインに影響してくる可能性もありますよね?

そうですねー。先ほども申し上げた通り課題は既に見えているので、その点はもちろん改善するつもりです。いろいろな面で幅を広げて行く必要があると思います。価格帯の面はもちろんそうですし、デザインについても着易さを意識していくつもりです。ですが、自分のアイデンティティを見失ってはいけないので、その芯の部分は大事にしていこうと思っています。

ロンコレでは靴もあり、今期はアクセサリーもありました。今後もアクセサリーはやっていきたいですか?

いつかはやっていきたいと思っています。現状まだ販売レベルではないので、近い将来もっと力を入れてやっていきたいですね。

現在はメンズラインが主軸ですが、さっきの話からすると東京で発表している内はレディースラインは発表しないつもりですか?

いや、ルックブックでは出していないですが・・・実はこのコレクションでもレディースは幾つか作っています。やっぱり、レディースは好きなので。ただ、今はメンズラインとしてブランドイメージを作っていきたいです。そして、将来的にはランウェイをやりたいので、その時にメンズ・レディースを出せるように想定しています。その時は全く売りを考えてないようなコレクションピースをレディースでまた作ってみたいですね。

「4大コレクションで発表することが目標」と仰っていましたが、東京コレクションで発表したいとは思っていますか?

う~ん・・・興味はもちろんありますが、今のところは東京でのランウェイはまだ検討中です。今後の展望としては、ランウェイという形式に捕らわれず、個展などの方法を通してまずは自分のブランドの世界観を色々な方に知って頂きたいと思っています。あと、もともと海外志向も強いので海外での展示会等も現在は検討しています。国内外を問わずグローバルな展開を目指したいですね。

聞き手・文:スナオシタカヒサ