Interview with Sputniko!

updated   : 18   : 0   : 0

スプツニ子!×ファッション―彼女は、なぜ作品を纏うのか?


なぜ、原発・菜の花なのか?

「震災や原発については“絶望”をテーマにしたような作品は、これからも生まれてくると思います。ただ、私がそういった作品を作っても現状から前に進めないような気がして・・・」


『Healing Fukushima(菜の花ヒール)』 写真:Takuya Shima

今回の作品は震災から直接紐付いている作品でした。取り上げようと思ったキッカケを教えてください。

震災が起こる前はロンドンに住んでいたので、この時間をアーティストとして日本で住んでいることは貴重だと感じ、「この状況をどう捉えてアウトプットできるか」ということを考えました。そして、福島での原発事故に関するリサーチを始めるなかで、とある記事で菜の花の除染能力について知りました。そんなポテンシャルを持った菜の花が、福島第一原発での事故で大きな被害を被ってしまった福島県の農業再生の手がかりになるのではないか、という声が日本で生まれていました。今まさに菜の花プロジェクト・ネットワークを始めとした環境グループを中心に、「福島で汚染されてしまった地域の土壌を、菜の花で除染しつつ新しいバイオエネルギーの生成地域に出来ないか?」という議論がされています。

菜の花の除染能力とは?

菜の花には、土壌のセシウムやストロンチウムなどの放射性物質を栄養素カリウムと同時に吸収する働きが実証されており、チェルノブイリ原発事故後もウクライナ政府やベラルーシ政府が5万ヘクタール以上の放射能汚染地域に菜の花を栽培するなどしています。栽培した菜の花から採取されるナタネ油はバイオディーゼルとしても利用可能で、原子力発電に代わる再生可能エネルギーとして、汚染地域での食用でなくエネルギー生成を目的とした新しい農産物として注目されています。菜の花によって土壌から吸収された放射性物質はほぼ全て茎に吸収されナタネに混入しないため、バイオディーゼルは汚染の心配なく使用する事ができます。


「超群島 – HyperArchipelago」展 写真:スナオシタカヒサ

GYREの展示では、現地に行っている写真もありましたね。

ちゃんと自分の目で見て、作品として発表する価値があると思いました。もしかすると、「菜の花」は、これからの原発問題を考えるときの一種のシンボルになり得るのかもしれません。2011年04月16日に開催された「菜の花パレード」では1300人が静岡県浜岡市に集まり、浜岡原発の停止を訴えるために菜の花を手にもって行進しました。その他にも、菜の花プロジェクト・ネットワーク主催「菜の花学会」の参加や、福島県南相馬市仮設住宅での地元住民とのアイディア交換を通して、『Healing Fukushima (菜の花ヒール)』の制作を進めてきました。今作品のネット公開を通して、日本だけでなく海外で原子力発電の未来や再生可能エネルギーの議論がソーシャルに広がることを願って制作と勉強を続けているので、夏の作品公開を楽しみにして下さい。


福島へ視察に行った際の写真/靴のスケッチ画(画像提供:スプツニ子!)

今回の作品では、イメージソースはありましたか?

計画的避難区域でもある福島県の飯舘村に串野さんと行ったとき、雪が積もっているなかグリーンハウスの残骸・骨組みが沢山あって・・・それが死んだ動物のように見えて何もなかったんです。でも山や森はすごくキレイで、その風景にインスピレーションを受けました。

なぜ、靴なのか?

「菜の花の種を植えるということは“希望の種”を植えるような感じもして、『自分の足で前進しながら埋められたら面白いじゃないか?』と思いました」


『Healing Fukushima(菜の花ヒール)』 写真:Takuya Shima

種まきと言えば手で行うものです。なぜ「靴=足」で行おうと思ったんですか?

震災や原発については“絶望”をテーマにしたような作品は、これからも生まれてくると思います。ただ、私がそういった作品を作っても現状から前に進めないような気がして・・・私のスタイルではないと思いました。「じゃあ、どうしよう?」と思った時に菜の花の除染能力の情報に辿りつき、「足」を使って歩いて前に進んでいくイメージが合っていると思って。それに菜の花の種を植えるということは“希望の種”を植えるような感じもして、「自分の足で前進しながら埋められたら面白いじゃないか?」と思いました。

ハイヒールにしようと思った理由を教えてください。

「ハイヒールの尖っている先端を利用して埋められるのではないか?」ということを思いました。それからスケッチを描いていき「これを一緒に作れる人はだれか?」と思いました。ただ、東京に来てから全く誰も知らなかったので、若手を多く取り上げている「Misha Janette(ミーシャ・ジャネット)」さんの『東京ファッションダイアリー』ブログで見ていくなかで串野さんを知りました。


Masaya Kushino『Reborn』

なぜ串野さんとコラボレーションをしようと思いましたか?

ファッションにありがちな表層的な格好良さとは違った靴の物語、ストーリーテリングがあることでした。あと、作りが繊細でアナログ的な所も、自分の作品とは違ったスタイルなのでコラボすると面白い結果が生まれるのではと感じました。今までは、理系人間だったこともありロボットのようなツルッとした作品を作る事が多く、ある意味苦手だった分野の挑戦でもありました。ちょうどお会いした頃に、串野さんが作っていた靴『Reborn』が、植物を題材にしていたのにも運命的な感じがしました。

どういった映像作品に出来る上がるかわかりませんが、靴を履いて土の上を履くと汚れるじゃないですか?その汚れた様が本来の完成形ということですか?

今の状態は種のような状態なので、使われてからが完成形ですね。串野さんの靴はエレガントではあるけど、自然・土・植物に対して同等に見ているので、むしろ土が被っているくらいがもっとキレイになる力がありますね。なんか、串野さんの作品って・・・遺跡とかで発掘されてもおかしくない存在感があるじゃないですか?(笑)

next page >彼女は、なぜ作品を纏うのか?