theme
It’s Tough Being a Man
designer & styling
Hidenori Kumakiri
hair & make
Kenji Toyota
look photo
Jun Imajo

beautiful people 2013 pre spring collection

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“寅さん”をマスキュリンに落とし込んだビューティフル・ピープル流のジャポニズム

「beautiful people(ビューティフル・ピープル)」による2013年プレ春コレクション「It’s Tough Being a Man」が発表された。今期は、寅さんでお馴染みの『男はつらいよ』からインスピレーションを受け、ビューティフル・ピープル流のマスキュリンなジャポニズムへ展開した。

ダブルのジャケットを肩に掛け、ダボシャツに腹巻き、ストレートのスラックス、蛇の鼻緒(はなお)の下駄、帝釈天(たいしゃくてん)のお守りスタイル。

この言葉だけでも、『男はつらいよ』を観たことがない人でも寅さんのイメージが湧いてくる。そのイメージをあえてメンズではなく、レディースコレクションで打ち出してきたことにビューティフル・ピープルの新たなる挑戦が垣間見える。スタイルとしての打ち出しだけでなく『男はつらいよ』を中心としたイメージの展開と転換、日本人デザイナーならではの着眼点に今期の面白さがある。

特徴的なのは、重衣料のアウター。袖を通さない寅さんのイメージを彷彿とするボックスシルエット。身幅だけ見ると野暮っぽい印象を与えるが、襟のサイズ、着丈、8〜9分丈に設定された袖丈や袖口のロールアップでバランスをとっている。ワンピースなどの軽衣料では、キーワードである蛇を様々な切り口で展開している。代表的なアイテムは、袖にフレアをたっぷり入れたブラウス。錦蛇(にしきへび)のウロコまでを表現したパイソン柄をオパール加工を施している。これは、寅さん愛用のダボシャツと雪駄の鼻緒に使われている錦蛇からインスピレーションを受けていることがわかる。また、この生地はショールカラーのドレスやギャザースカートにも用いられ、シルクベースのレーヨンサテンが品のある印象を与えてくれる。

一方、最も寅さんを象徴するのは、腹巻きスタイルでみせたリブスカート。最高級のスーピマコットン糸を毛羽を抑えながら撚ったコード糸は14本もの多本撚りのコードにしたことで上質な綿糸の光沢に仕上がっている。そして、着る人の気持ちを考え、左右の脇に逆開ファスナーをつけている。これにより、リブスカートがハイネックのノースリーブ、ボートネックプルオーバー、ベアトップなど、アイディア次第で自由に着こなせる仕様になっている。

デザイナー 熊切秀典は、寅さんについて「設定を調べていると、江戸時代の男物の半纏を艶っぽく着崩して纏う辰巳芸者のイメージから、女性物のスーツ地で仕立てたジャケット、シャツ代わりのサックスのダボシャツ、スーツと同じ色目でベスト代わりの腹巻きだったり、日本古来の粋の文化に対するリスペクトを表現していることに気が付いた」という。

その言葉通り、コレクションでは寅さんのイメージ展開だけでなく、スタイルのバックボーンである江戸時代からも広げている。その特徴を表しているのが生地に秘められている。

寅さん愛用の半纏をイメージしたハーフコートや膝丈のラップ式タイトスカートの「EDO stripeシリーズ」では、江戸時代に農山村で手織りされていた地縞と呼ばれる木綿の織物の縞柄を上質な素材に昇華させた。リネンのロービング糸に配色のシルクを巻き付けた糸は複雑な色合いを表現し、自然な光沢感と味があり、凹凸感のある生地に仕上げている。

なかでも目をひいたのは、ワークコートを思わせるゆったりとしたオーバーサイズのチェスターコート、細めの衿がポイントのテーラードジャケット、裾に向かって細くなる2タックパンツ、スッキリしたラインのキュロットで展開した「AJIROシリーズ」。網代(あじろ)とは、もともと竹や薄く削った木を編んだ簀(す)で魚を捕る用具を指す。バスケット状の織り柄が特徴的なこの素材は、江戸時代には木綿の着物地として多様された織り柄である。それをウールシルクの糸でスーツ地へと進化させた。アウターはゆったりとしたボックスシルエットだが、コートは袖口に向かって分量を絞り、ジャケットはラペルを細めにするなど、随所にパターンメイキングの段階で現代風に落とし込んでいる。一歩間違えると「古臭い」印象を与える難易度が高いクラシックな素材だが、パターンやテキスタイルに定評のある同ブランドならではの落とし込み方である。

ルックのなかで、ワンピース、パンツ、スカートにマークした帯ベルトは、袴をしまうときの帯紐の畳み方「出世だたみ」をアレンジし、錦蛇革と牛革のダブルの帯を組み合わせもの。その他にも、江戸時代の絣染め生地によく見られた十絣(じゅうがすり)という十字の柄をジャカード組織でソリッドに織り出し、エレガントなブラウス地に仕上げた「KASURIシリーズ」。江戸時代の着物の柄にちなんだ市松柄など、様々な素材や技法でバックボーンを反映した。

パッと見の印象では、これまで以上に「野暮っぽい」印象を与える。だが、そこにこそ欧米にはない日本人ならではのマスキュリンな落とし込み方、“粋”が存在する。上品であり、派手でもある。また、渋みもありながら野暮も理解してこそ生まれる。様々な経験を踏まないと見出すことができない日本ならではの美学である。そして、「野暮にもまれて、いきとなる」となるという諺があるように、「これまで『モードなのに野暮ったい物』を目指してきた」というコレクションになった。そうして、和を巧みに洋へ織り交ぜ、古き良き物を現代風に落としこむことで、独自のジャポニズムを打ち出した。

2012年プレ秋コレクション「NO TENKI」から2012-2013年秋冬コレクション「NO TENKI Ⅱ」へコレクションを跨いだように、今期のコレクションが何かしら次のコレクションへと続いていく可能性など、ビューティフル・ピープルの挑戦はコレクションブランドならではの奥行きの面白さを教えてくれる。

取材・文:スナオシタカヒサ

beautiful people / ビューティフル・ピープル

「何か新しいもの」をコンセプトに、熊切秀典(企画デザイン)、戸田昌良(パターン)、米タミオ(企画生産)、若林祐介(セールスプロモーション)の4人が中心になっている。大人と子供が共有できる“キッズライン”など、確かな技術に裏打ちされたウィットに富んだコレクションが特徴。また東京ブランドでは珍しくプレコレクションにも力を入れている。昨年には初の直営店をオープンするなど、業界内外から高い支持を得ている。

designer

熊切 秀典
Hidenori Kumakiri

collection

2016 s/s

2015 a/w

2015 s/s

2014 a/w

2014 s/s

2013 pre autumn

2013 s/s

2013 pre spring

2012 a/w

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2012 spin off summer

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2012 pre spring

2011 a/w

2011 pre autumn

2011 s/s

2011 pre spring

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2010 s/s

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2008 s/s

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