designer
Junya Suzuki
Reiko Sakuma
photographer
Maki Taguchi
model
Reiko Sakuma

chloma 2013-2014 autumn & winter collection

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2次元の日常を"リアル"に落し込むchlomaのコレクション

「chloma(クロマ)」による2013年秋冬コレクション「被験者」が発表された。chlomaとはデザイナー鈴木淳哉氏と佐久間麗子氏によるファッションレーベルである。

今回のテーマは「被験者」

ぼくたちの終わらないはずの日常には
ある日を境にうすーくおおきな「痛み」が
レイヤーされてしまった。
そんな「痛み」についてのコレクション。

「2年前、多くの犠牲者を生んだあの日から、日本人全体を表現する言葉として「被験者」が相応しいのでは、と感じています。目に見えない存在に管理されているような感覚。半永久的に消える事の無い不安と傷がうっすらとレイヤーされているような感覚。そんな世界をどう表現すれば良いかを考えました。」とデザイナー鈴木氏と佐久間氏がテーマについてコメントした。
今回のコレクションには病弱Tシャツ、バンドエイドコート、救急パーカーなどのネーミングがついている。「傷」「痛み」を負った世界を救助するのは自分たち自身なんだ、という強いメッセージが現れている。「モニターの向こうで世界が崩壊していくイメージ」がプリントされている“炎上スウェット”というアイテムから彼らがその時体験した事がリアルに表現されている。カタログには「ウィンドウのむこうで人やセカイが危険に晒されていてもただ見ている事しか出来ない。」という文章が。日本の大多数の人がこの不甲斐ない気持ちを経験したことだろう 。この気持ちを忘れてはならないという思いが伝わってくる。

ルックで分かるchlomaの造形

ねんどろいどをはじめとするデフォルメフィギュアのような造形を美徳としています。」と言うように、彼らにとってバランスがデフォルメされたキャラクターは、服をデザインするときのひとつの基準となっている。ねんどろいどは、アニメのキャラクターなどを2等身・3等身にデフォルメしたフィギュアのシリーズのことである。この造形が1番表現されているのは、今回のコレクションに登場したネンドロイドコート。シルエットはハンガーにかかっていると一見普通のコートと違いが分からない。しかし着用するとシルエットは長く丸みを帯び、肩は落ち、身体の重心が低く見える。このバランスが他のコートにはない絶妙なシルエットを生み出している。

劇的に変わったchlomaの印象

初期の頃は全体的に黒を貴重とし、素材はナイロンやレザーを使用し、強く・攻撃的な印象だった。だが今期のコレクションは白や淡い水色を貴重とし、素材はウール用いて全体的に丸みを帯びている。攻撃的なイメージはなくなり、柔らかく・やさしい印象に変化していた。この変化について鈴木氏は「着る人の「弱さ」を前提にデザインをするようになりました。3.11以降の世界の主人公は「弱い個人」なんです。弱さを前提にした上でどう物語を描けるかを意識しました。結果的に以前より女性にも受け入れやすいシルエットや色の展開になったと思います。」とコメントした。

2次元をリアルに表現する。

chlomaはゲームやアニメなどの2次元やネットの世界のフィルターを通して服をデザインする。デジタルコラージュされたプリントのスウェット、プラモデルを彷彿させるシルエットのレザースカート。そして全体的に無機質な色を使用していて、2次元という実在しない世界の服を感じさせる。

また2次元へのこだわりは服のデザインだけでなく、コレクションカタログやウェブにも表れている。chlomaのカタログは服の写真と名前、説明文があり、まるでRPGの中に出てくる装備品・アイテムのように記されていた。chlomaのコレクションは、着心地やデザインの他に、服を「装備する」・アイテムを「ゲットする」といったゲーム要素を想像させる。

また、2次元の世界を服で表現するというとコスプレ衣装になりがちだが、chlomaは違う。それは、ねんどろいどのようにデフォルメされた造形を追求しつつも、リアルクローズを意識して服をデザインしているからだ。

「コスプレをする人は、そのキャラクターになりたいという願望があります。しかし、アニメに登場している女の子はその欲がないんです。自分をよく見せようとする欲がないんです。」つまり、アニメの中のキャラクターにとっての衣装は、コスプレではなく、リアルクローズなのだ。

2次元の世界をそのままデザインしてしまうとコスプレとしての服となってしまう。ファッションデザイナーとして、2次元の世界を表現しつつ、好まない人にも受け入れてもらえるデザインにするのかがこれからのchlomaの課題となるだろう。chlomaのコレクションは初期と比べるとよりリアルクローズに向かいつつも、2次元の表現も進化をしていた。今後どのような展開で彼らの世界をリアルクローズに落とし込むのか、来期からのコレクションが楽しみだ。

文 徳永啓太