designer
Yusuke Kagari
look photo
Yoshitsugu Enomoto

Kagari Yusuke 2012 collection

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ヴァーチャルとリアルワールドの狭間にある2.5次元を表現したカバン

「kagari yusuke(カガリユウスケ)」による2012年コレクション「virtual wall」が発表された。年に一回というペースでコレクションを発表する同ブランドでは、毎回「壁」をコンセプトとした作品を発表している。今年は、ヴァーチャルとリアルワールドの狭間にある2.5次元を表現した。

「僕らは壁の中で生まれて、壁の中で生活している」

壁、壁、壁・・・展示会場に入ると、空間を作り出す壁だけでなく、背景と同じ壁がプリントされた作品がひたすらに並ぶ。ふと上を見上げると、そこには「世界は全てカバンとして持ち歩くことができる」のキャッチコピーが印字されている。今期はデザイナー 明松佑介自身が都内を中心に撮影した様々な壁の写真を利用して、テントなどに使われるターポリン素材にインクジェットプリントを施した。これまでのインダストリアルな雰囲気からカジュアルなファッションとも合わせやすいデザインに変貌した。廃墟のような壁から工場のインダストリアルな壁・・・どれも共通しているのが経年劣化した模様がある壁という共通点である。経年劣化や模様という点では昨年に発表した「100年の壁」といったアーカイブテーマでも表現してきた。だが、それらは全て“壁の質感”を立体的に表現してきた。

今年の“壁”は一味違う

ヴァーチャルワールドとリアルワールドの狭間にある2.5次元を表現した世界観は、安易に転写プリントをされた作品とは一線を画するテーマアプローチである。「壁」や「カバン」という限定されたコンセプトが故に、奥行きがあるのが同ブランド最大の魅力と言っても過言ではない。プリントという平面上の表現に落とし込むことで、多彩な表現が可能となり壁とカバンの距離は近くなった。「写真を撮っていて思ったのが・・・日本の壁や建築はモノトーンが主体で、色は差し色として使われているのが特徴的だった」というように、プリントされたバッグでは日本の特徴が色濃く表れている。よく見ると「文字」という情報を削ぎ落としている。「グラフィック自体は好きだけど、テクスチャーよりも文字に目がいってしまうから。もっとマテリアルに寄りたい」という理由で表面には出てこないが、裏面では記号化された文字の一部分がプリントされている。

「プロダクトブランドとして、変えすぎないようにしている」

シルエットの面では「プロダクトブランドとして、変えすぎないようにしている」というように従来型から大きな変化はない。それ踏まえた上で、新たなシルエットとして登場したのが壁の亀裂を表現したボディーバッグである。通常のバックパックを二分割し、亀裂部分をファスナーの虫を使って表現したデザインはカガリユウスケらしい作品と呼べる。また、一つ一つのアイテムに撮影地の名称が付けられており、親しみやすさが込められている。

「世界は全てカバンとして持ち歩くことができる」

今後はワークショップなどで、参加者自身が壁の写真を撮って本コレクション同様にアイテム転換する企画を予定している。「今を楽しむ!」ことをモットーとするデザイナーならではの姿勢が一つのコレクションから派生していることがわかる。今期は、都内近郊の壁を中心としたアプローチをしたが、キャッチコピーである「世界は全てカバンとして持ち歩くことができる」を体現するように、様々な国や地域の壁を使った表現にも今後期待したい。 また、今回はメインマテリアルである革を使わずに表現したが、インクジェットプリンターの進化などでレザーバージョンの登場も楽しみにしたい。

写真・文:スナオシタカヒサ

kagari yusuke / カガリユウスケ

「壁を持ち歩く」をコンセプトにしたバッグやアクセサリーコレクションを年一回発表している。「壁」という限定されたテーマでありながら、様々な角度から切り取ったデザインが特徴。地方巡業やワークショップも精力的に行なっており、着実にブランドの成長を遂げている。

designer

明松 佑介
Yusuke Kagari

collection

2012

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2010