matohu 2012-2013 autumn & winter collection

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シンプルの先にある「やつす」ことで生まれるファッションの美意識

「matohu(まとふ)」による2012年秋冬コレクション「やつし」が発表された。ファッションを通じて日本人の根底する美意識を掘り起こすプロジェクト「日本の眼―第五章」となる今期は、「やつす」ことで生まれる美意識を追求した。

なぜ『やつす』ことが美しさにつながるのか?

今期のテーマ「やつし」とは、豊かで美しいものや気高い精神があえて簡素に貧しく姿を変えることを指す日本的美学の一種である。そこで、デザイナーは「枯山水をはじめとする日本の物の多くが『やつし』の考えに基づいているのではないか?・・・そして、なぜ『やつす』ことが美しさにつながるのか?」という素朴な疑問から今期に行き着いた。

冬枯れのいちょう並木を通り過ぎて、会場である「秩父宮ラグビー場」の観客席下通路に入ると、早くもその美学が垣間見える。着席すると枯れた並木しか見えず、侘しいイメージを抱くが、そこにデザイナーが抱いていた疑問、「なぜ、『やつす』ことが美しさにつながるのか?」という一つの答えが隠されていた。

内面から滲み出る気高さ

早春の肌寒さを感じるなか、ショーの開始を告げるアンビエント・ミュージックがアスファルトに響き渡る。長い一本道のランウェイから、緩やかな風を受けて髪を結いたモデルが闊歩(かっぽ)してくる。ナチュラルメイクを施したモデルの表情をみると、アイブロウに対して強調したラインをひいていることが印象的に映る。今期に対する意図、内面から滲み出る気高さを表していることが読み取れる。

「何もしていないように見えるものにしたかった」

自然に入り込んでくる風になびいて、マントのように見えるコートや分量の多いスカートが、踊るように生き生きとした動きをみせる。また、単にドレープ性だけでコーディネートするのではなく、体に添ったアイテムを対となる部分に取り入れたことで、シルエットに対するコントラストを付けている。このようなカッティングに対して「何もしていないように見えるものにしたかった」というように、手を尽くしているが簡素のように見えるよう仕上げている。

シグネチャーでもある長着では、初のレザーシリーズが登場した。目を凝らすと、裏地などは品のある素材やプリントを使い、ゴートスキンの長着やブーツのレイヤード部分では、ヘムをカットオフ仕様にした理由がみえてくる。

穴があいているように見えるコートやスカートも、表面のウールに楓の葉を描き、その部分のみ溶かす特殊なオパールプリントを施している。秋の木漏れ日のように、裏面の3色のストライプ柄が異なった表情を生み出す。一見、麻に見えるシルクなどにも、トロンプイユのような「だまし」といった錯覚の類ではなく、高価で豊かなものが質素な姿に身をやつすことで生まれる「やつし」の美学が隠されている。

なかでも秀逸なのは、「くずまゆシルクのハケ染め」を使ったワンピースやスカートの作品である。粗い風合いのくずまゆを綿と合わせて織り上げた素材に対し、ハケ染めで一気に描くことで、ため息の出るような美しいグラデーションとなっている。

冬枯れの並木も秋になれば黄葉する並木へと様変わりする。そういった情景が読み取れるよう席配置を組むことで、存在する時間の奥行を心で思い描いて服を観ることに「やつし」の美学を反映している。そして、テキスタイルの経時的変化や服を纏う人の心で思い描く情景にこそ、今回のテーマを反映した「やつす」ことで生まれるファッションが完成する。

世界経済の落ち込みや震災の影響から、多くのブランドが色や装飾で「ゴージャス」を追求してきたが、震災から一年が経った今だからこそ「シンプル」の先にある、内面の豊かさにこそ私達に必要な精神性があるのではないかという問い掛けをしている。今後も、まとふならではの日本人の通底する美意識を掘り起こしてくれる世界観に期待したい。

写真、文:スナオシタカヒサ

matohu / まとふ

日本の美意識が通低する、和服でも洋服でもない新しい服を追求している。2009年には「毎日ファッション大賞」で新人賞・資生堂奨励賞を受賞するなど、業界から高い評価を得ている。「matohu慶長の美」展をはじめ、積極的にブランドの展覧会を行なっているのも特徴。2012年8月には初の書籍『言葉の服』を出版するなど、年を重ねる毎に着実にブランドの成長を遂げている。

designer

堀畑 裕之 / 関口 真希子
Hiroyuki Horihata / Makiko Sekiguchi

collection

2016 a/w

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