- date
- 2012/10/17
- place
- ROPPONGI HILLS HOLYWOOD HALL
- theme
- BRIGHT
- designer
- Ato Matsumoto
- show director
- Makio Tanioka
- hair
- Masayo Tsuda
- make
- Tomihiro Kono
- selection of music
- Kenichiro Nishihara
- music song
- Drake
- -Crew Love
- Frank Ocean
- -Thinkin Bout You
- Jay-Z & Kanye West
- -Made in America
- The Weekend
- -05 Initiation
- -Heaven Or Las Vegas
- moive
- INFAS publications
- model
- MORITZ
- DUCO
- BENJAMIN J.
- ALEX
- STEFAN L.
- DOUGLAS
- ETHAN
- LOUIS
- ANDREY
- JON
- DENNIS
- JORDAN
- JAKE
- model casting
- HYPE
- invitation
- Tomoyuki Yonezu
- look photographer
- Mamoru Miyazawa
ato 2013 spring & summer collection
updated
ゴージャスではなく、品性と明るさを追い求めたエレガンス
「ato(アトウ)」による2013年春夏コレクション「BRIGHT」が発表された。今期は、これまで通り社会的変化と衣服における普遍的な関係性を考えつつ、純粋に着る人にとって気分が高揚するような色彩や着心地を追求した。
「日常のなかで何が格好良くて、社会に受け入れられるのか?」
会場が真っ暗となり、音楽の開始とともにゆっくりと照明が辺り一面を照らしていくと、3人のモデルが一斉に登場した。デザイナー 松本与が「フォーマルやクラシックなど構築的なものよりか、開放的でリラックスしたものを着たいと思っている」という言葉を象徴する幕開けとなった。
ブランド創設時から変わらず、何か具体的なインスピレーションより「日常のなかで何が格好良くて、社会に受け入れられるのか?」を俯瞰的に考えるところからアトウのクリエーションは始まる。そして、今期は「デザインでみせるよりかは色や素材、ブロッキングなどでみせることが今の感じだと思った」という答えを導き出した。
その言葉通り、序盤からグリーンやベージュ、ネイビーなど様々な色彩が映り込んできた。要所でテーマの光を感じさせるイエローやオレンジ、ゴールドといった色も登場してきたが、いずれも煌びやかなゴージャス色というより、どこか落ち着きのある色合いを選んできた。
アトウ流のスタイリングとデザインの関係性
スタイリングとしてはシャツインに注目。アトウではここ数シーズンの特徴的ポイントでもあるが、例年以上にウエスト位置をジャスト、ハイ、ローといった様々な高さで提案している。また、スニーカーやバックパックをスタイリングポイントにしていることは、「面積の小さいものはデザイン性の強いものを入れても受け入れられやすい」という自身のデザイン論が元になっている。
レディースライクな素材を採用したことで、軽さや動きに表情が生まれる
アイテムではライダースやトレンチコート、ブルゾンなど秋冬に着るようなアウターをカーディガン感覚で羽織るように着用出来るのも見どころの一つ。アセテートやキュプラ、レーヨンといったレディースライクな素材を取り入れたことで軽さや動きに表情が生まれた。いずれの素材も、パターンやソーイングの難易度が高い独特な動きを出すため、イメージとズレないようにトワル段階からシーチングではなく実物の生地を使用してスタイリングと併せて徹底的にデザインに拘っている。
何シーズンも重ねてブラッシュアップしていくデザイン
切り替えでは、Tシャツやシャツといった軽衣料でアトウ春夏特有の遊びを取り込んできた。2012年春夏コレクションと同様に、特定のモチーフで主張するというより直線的なブロッキングをつかって、一枚で着たり、インナーとして着た時の見え方、着方次第の幅を提案していることがわかる。切り替え線もレディースのようにデザイン線として使うのではなく、体の構造線が活きるように計算されている。このような姿勢に、ワンシーンで全て表現することよりも何シーズンも重ねてブラッシュアップしていく意図が感じられる。
メンズブランドの根底を伝え続けるジャケットライン
ショーの後半になると、カジュアルなアイテムから一転してシックなジャケットスタイルが登場した。スタイリングやレングス、ショルダーストラップでハズしを入れているものの「メンズブランドの基軸はジャケットにあると思っている。それをキチンと押さえられれば、物作りを理解されると思う」という考えが象徴するラインナアップ。これはカルチャーやストリート色が強い東京ブランドにはない、西洋的モードの考え方が如実に表れたシーンではないかと感じた。
色彩もショーの差し色感覚として使っていた、グレーやブラックを基調色としたことにも興味深い。一見すると王道の追求という意図にも取れるが「ここ数シーズンのカラフルな提案の反動で、黒が新鮮に感じられる」という次代への布石、何か秋冬コレクション以降へ続いていくような予兆を感じさせるフィナーレだった。
変わらないようで変わる時代への察知力
今期もテーマ名は直接的な題材だったが、それはアトウにとって一つの記号に過ぎないのかもしれない。つまり、本質は「今の社会情勢のなかで、服の着方が変化してきている。ある特定のシーンだけでは無く、生活の様々なシーンで着られる服が求められている」という言葉にこそ、アトウというブランドの社会的立ち位置を示し、服を通して伝えようとしている今のメッセージではないか。
ショーで発表するブランドは、なにかとコンセプチュアルやアバンギャルドのような大きな潮流を求められる傾向にある。そういったものを求める人には退屈と感じる人もいるかもしれない。事実、松本与自身が「アトウの格好良さの基準は変わっていない」という言葉も真実だろう。だが、アトウの本質は変わらないようで変わる、僅かな変化にこそ深みが表れる。
「着る人の手助けをしたい」、「着る人の個性が際立つような服」、「生活のなかにある服で主張があるものを作りたい」といった取材中に語った言葉がクリエーションに繋がっているように感じた。2013年でブランド創設20周年という節目を迎えても、若者から大人まで愛され続けてきた所以を突きつけられたコレクションだった。
写真・文:スナオシタカヒサ
ato / アトウ
93年のブランド設立から身体を個性の象徴と捉え「個々の個性を引き出す」という考えのもと、一つ一つのパターンにこだわりを持ち服作りに取り組んでいる。全てのアイテムを立体裁断で作っているのも特徴の一つであり、全ての服にパタンナーネームをつけていることでも知られている。20周年を迎える来年は更なる飛躍が期待される。
designer
松本 与
Ato Matsumoto
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