matohu 2015 spring & summer collection
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素と向かい時の経過に望む心
2014年10月14日ラフォーレミュージアム六本木にて「matohu(まとふ)」による2015年春夏コレクション「素(しろ)」を発表した。今期は自然そのままの“生成り”と移り変わりへの美をコレクションで表現した。
時の経過を慈しむ
会場は素木が敷き詰められた参道を連想させるランウェイに和の空気が漂い、穏やかに奏でるピアノと共にショー幕開けを告げる。序盤はテーマである生成りのアイテムが揃う。細かく目をやると柾目柄が施されており、暖かい春に顔を出す若木のような情景を感じる。革製品は使っていくごとにあめ色に変化していく。時間が経つにつれて表情が変わることを楽しむという意図が伝わってくる。
徐々に生成りから色の濃いアイテムへと移っていく。草木染めにより黄色に染められたカットソーは染色の際に糸で強く結び染まらず「素」のままに表している。絞り染により白く残った生地にこそ素材の持つ魅力になっている。
そして時の経過を色だけではなく技法でも魅せていた。例えばデニム素材に見えるセットアップは、ツイード生地を何度も退色させている。また長着はロウけつ染め作家中井由希子氏との作品である。溶かしたロウを布に直接模様を描き生地を染色すると ロウのついた部分は色が染み込まずに白く残る。染色を何度も繰り返すことで生まれる作家中井氏の絶妙な配色が、自然の静寂な雨のような春の涼しげさを感じさせる逸品である。
ピアノの旋律が高まり始めた終盤、再び白一色のアイテムにヘッドアクセサリーを施したスタイルが姿を現した。胸元がゆったりとしたトップスは自然が織り成す穏やかなベールを纏っているかのようである。水引をモチーフに編まれたアクセサリーは一点一点異なり、籐の風合いが服、素木のランウェイと調和をしている。序盤より生成り印象が強く、新しく洗礼されたmatohuという空気を纏いショーの幕が閉じた。
「常若」の心
今回テーマの元となっているのは伊勢神宮の式年遷宮。式年として定められた20年に一度、内宮・外宮の正宮や別宮などの建物を造り替え、神様にお遷りいただくお引越しという古来からの伝統である。古いものから新しいものへ作り変えるだけでなく、常に若い気持ちで明日へと向かっていくという精神でもある。
ブランドとしての美しさを保ち続けるために繰り返し再生するという日本の精神をショーの構成に取り入れた。デザイナー堀畑氏は「白に戻ってくることで原点回帰した」と言い、そして自分らしい色とは、生成りというスタイルから成熟していくこと。生成りから時が経つにつれ色が変わっていきまた生成りに戻る。matohuという名には「纏う」と「待とう」という2つの意味が込められている。時の経過を楽しむということは、今期は後者の意味である成熟するのを待とうという呼びかけが色濃く込められたコレクションであった。
文:徳永 啓太
matohu / まとふ
日本の美意識が通低する、和服でも洋服でもない新しい服を追求している。2009年には「毎日ファッション大賞」で新人賞・資生堂奨励賞を受賞するなど、業界から高い評価を得ている。「matohu慶長の美」展をはじめ、積極的にブランドの展覧会を行なっているのも特徴。2012年8月には初の書籍『言葉の服』を出版するなど、年を重ねる毎に着実にブランドの成長を遂げている。
designer
堀畑 裕之 / 関口 真希子
Hiroyuki Horihata / Makiko Sekiguchi
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