- date
- 2012/10/16
- place
- Shibuya Hikarie Hall B
- theme
- OFF CITY
- designer
- Hiroaki Shitano
- show director
- Takashiro Saito
- stylist
- Lambda Takahashi
- hair & make
- Masanori Kobayashi
- selection of music
- Shogo Soejima
- model
- BENJAMIN
- RUTGER
- KATEB
- EVGENI
- DANNY
- JAKE
- ARTHUR
- JOSEPH
- DENNIS
- JORDAN
- LENNOX
- STEFAN
- ANGUS
- ROBERTO
- ASOBU
- show press
- 4K
- look photographer
- Hiroyuki Kamo
WHIZ LIMITED 2013 spring & summer collection
updated
自身のコンプレックスと向き合って生まれた、ウィズ リミテッドの新たな着想境地
「WHIZ LIMITED(ウィズ リミテッド)」による2013年春夏コレクション「OFF CITY」が発表された。今期は、自身の生まれ育った街であり、コンプレックスでもあった新宿から空想したライフスタイル。デザイナー自身の趣味でもあるスケボーをデザインに派生させ、新たな着想境地を開いた。
未来ではなく、あくまで現代に近い未来の想像
ネオンのようなまばゆいブルーライト、アップテンポなミニマルテクノがショーの開始が告げた。だが、「OFF CITY(近代都市)」から想起しがちな所謂”フューチャリスティック“なアイテムは登場してこない。強いて言うなら、ショーピースとして登場した踵がチカチカと光るPUMAのスニーカーは、未来を感じさせた。
しかし、アイテムや素材をリミックスしたような感覚のデザイン、ストレートラインのサイズ感、袖やパンツのレングス、レイヤードスタイルの打ち出し方などに関しては、これまでの“らしい”感じがベースになっている。ウィズ リミテッドらしいマットな質感のテキスタイルに加え、ライダースジャケットやダウンベストなどに使ったシャイニーなポリエステルやナイロン素材は、未来的イメージのエッセンスといえる。
それは、デザイナーが想い描いたものが無から想像する遠い未来というより、限りなく現代に近い未来と言った方が正しいからだ。リアルクローズをベースにした未来、そこに本コレクションの醍醐味がある。
「自分がその世界に入り込んだ時を投影したデザイン」
今期、なかでも力を入れたアイテムの一つがファーストルックで登場した、ベーシックなテーラードジャケットである。だが、後身頃をみた時に「おっ!」とするような驚きが隠されていた。パックリとAの字に繰り抜かれ、「前傾姿勢でプッシュ(スケボーに乗った状態でスピードを出すために足で地面を蹴る技)した時に、なびいたら格好良いかなー」という発想で、裏地のストライプが隙間から見えるようになっている。
スケボーにテーラードジャケットというと、袖の振り幅や運動量が気になるところ。そのような懸念も動きやすいカットソー素材などを使用し、肩パッドを入れない工夫をすることで、実用性を考えた非常に計算された仕立てになっている。「テーラード着て、家の近所をスケボーをしたりする」という趣味をより昇華させたデザインである。ローファーをカットオフしたデザインのレザーサンダルもテーラードから派生したアイディアアイテムといえるだろう。
その他にも、一見するとセットアップスーツのように見える裏地も付いたカバーオールも非常に興味深い作品。バックデザインは股上が深く、腰のラインに別布のシャツ地を挟み込むことで、まるで腰パンしているような後ろ姿にみえる。一部のボトムスには、脇にペットボトルをスポッと入れられるようなポケットを付けているアイテムもあり、軽い運動をしながらでも手ぶらで過ごせるのも魅力的な仕様だ。いずれも服をデザインする時に心がけている「自分の年齢を置き換えたり、着る時のステージ感をディレクションするイメージ」で誕生した。
傑作と呼べる、スケーターやノマドワーカー必須のバッグが登場
「テーラードにリュックのスタイルは嫌だ」という想いから、「BULLET(バレット)」とコラボレーションしたバッグシリーズは、正に今回のテーマに合った傑作と呼べる作品である。一際注目を集めたグリップ付きのクラッチバッグは、スケボーを挟み込んだり、MacBook 13inchや小物を収納できる。軽量なボディバッグもフロントには小ぶりのポケットがあり、背中にはMacBook Air 11inchを収納できる。いずれも現代感溢れるデザインと機能力を兼ね備え、なにもスケーターでなくても、アウトドアシーンやガジェットを愛するノマドワーカーであれば・・・否、これを買ったらスケボーをしたくなるほど、まずは手に入れておきたいアイテム。
バレット以外にも、今期は「Punto Pigro(プント ピグロ)」とのローファー、「DIEMME(ディエッメ)」とのマウンテンブーツ、「JAM HOME MADE(ジャムホームメイド)」とのアクセサリー、といったコラボレーションアイテムが充実している。
OFF CITYとはどんな世界だったのか?
恐らく、ショーを観た人であれば「一体、OFF CITYとはどんな世界だったのだろうか?」と思ったかもしれない。そこで、今期のキッカケについて、デザイナー 下野宏明に話を聞くと第一声に意外な言葉が返ってきた。「居心地が悪くて、ずっと嫌いだった新宿(自身の生まれ故郷)からイメージした」。
クリエーションとして何かを打ち出す際に、コンプレックスと向き合うことは容易な作業ではない。そこで、更に話を聞くと「この年になって、子供が出来て、ちょいちょい新宿に行くようになって・・・夜に西新宿にいた時『この洗練されたシュッとした感じが今の気分だなー。テーラードを着て、スケボーしたいなー』ってピンときた」という。コラージュなどでイメージビジュアルなどを作らず、ただ「ビルに囲まれながら」という想像から生まれた。
「グラフィティーを大事にしたかった」
西新宿といえば、日本最大級の超高層ビル街を誇る都市でもあり、新宿区立公園の中では最も広い新宿中央公園もある。プリントでいえば、遠目から見ると文字が印字されているようにみえる新宿の夜景写真をコラージュしたプリントが良い例だろう。或いは、ストリートという観点では「俺が若かったらボム(ウォールペイント)したりするだろうなー」という想像から生まれたドリップ(液体がポタポタたれている様)も注目。インビテーションやナイトカモに施したドリップは、まるでトンネルに施したボムで余ったスプレー液のようだ。ファーストルックで登場したエプロンシャツもポケットにスプレーを入れて、ボムする姿から生まれたデザイン。
トレンドとトラディショナルの中間
あえて、タイポグラフィーやグラフィティーをボムらしいもの、その他にもコンセプチュアルな要素を全面に出さなかったことに対し「カルチャーなものを洋服のなかに色濃く出したくない。でも、ちょっと入っちゃう。そのくらいの感覚が良い」という。続けて、「子供の時から、一緒になるのがなんか恥ずかしいというか、ダサいというか・・・街で後ろ指を立たされるのが嫌な服は着たくない(笑)。だけど、あまり王道から外れたくない。5年、10年先も普通に着れる服。買った人に後悔させたくない、それが一番」といったのは、特徴的なコンビ使いのルーツや下野宏明が生み出すウィズ リミテッドのファッションを表す言葉かもしれない。
自身のコンプレックスと向き合って生まれた、ウィズ リミテッドの新たな着想境地
ブランドやデザイナーの姿勢を知っているファンからすれば、今期は意表を突かれたかもしれない。だが、複合的なイメージが合致し、年月や環境変化を経て自身の趣味やコンプレックス、時代の空気感に対して客観視が出来たからこそ誕生したコレクションといえるのではないか。
取材・文:スナオシタカヒサ
WHIZ LIMITED / ウィズ リミテッド
よりデザインコンシャスなアパレルを提案すべく「INDIVIDUAL CLOTHING」をブランドコンセプトに、モードやストリートといった枠組みを超えたTOKYO STREETという世界観を展開。また、シーズンコレクションとは別に倉石一樹との共同制作によるライン「Felicity」やハンドメイドで製作されるレザーアイテムのライン「Whiz Leathers」といったラインも展開している。
designer
下野 宏明
Hiroaki Shitano
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